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【不動産解説ブログ】不動産「贈与」する際の注意点

はじめに

不動産を家族や親族に譲り渡す方法の一つとして「贈与」があります。
 相続が発生する前に不動産を移転できる贈与は、生前の財産承継対策として広く用いられています。特に高齢化社会において、子どもや孫へ住宅や土地を早めに譲るケースは増加傾向にあります。

しかし、不動産の贈与は現金や動産と異なり、税務・法律・登記の手続きが複雑であり、安易に進めると大きな負担やトラブルにつながる恐れがあります。本コラムでは、不動産を贈与する際に押さえておきたい注意点を、税金・法律・実務の観点から詳しく解説していきます。

1. 不動産贈与の基本的な仕組み

贈与とは何か

贈与とは、当事者の一方(贈与者)が自己の財産を無償で相手方(受贈者)に与える契約をいいます(民法549条)。不動産の場合も同様で、贈与契約を締結し、登記を経て初めて所有権が移転します。

贈与のメリット

  • 相続発生前に財産を移転できるため、相続財産を減らし、相続税の節税効果が期待できる。
  • 生前に受贈者へ資産を確実に移転できる。
  • 子どもや孫が早くから資産を活用できる(住宅取得や事業資金に充当など)。

贈与のデメリット

  • 贈与税が高額になる可能性がある。
  • 不動産取得税や登録免許税などの諸費用が発生する。
  • 贈与者の生活資金が不足するリスクがある。

2. 贈与税に関する注意点

不動産贈与の最大の論点は「贈与税」です。贈与税は相続税よりも税率が高く設定されており、無計画に不動産を贈与すると大きな税負担が発生します。

贈与税の基礎控除

贈与税には 年間110万円の基礎控除 があります。現金や預貯金であれば小口贈与を繰り返すことで負担を軽減できますが、不動産は一度に大きな評価額となるため、この控除では不十分です。

贈与税の計算例

例えば、評価額3,000万円の土地を子ども1人に贈与した場合、基礎控除110万円を差し引いても2,890万円が課税対象です。この場合、税率は最高55%に達する可能性があり、贈与税額は数千万円にのぼります。

相続時精算課税制度の活用

贈与税の負担を軽減する方法として 相続時精算課税制度 があります。これは60歳以上の父母や祖父母から20歳以上の子や孫への贈与について、2,500万円まで非課税とする制度です。超過分も一律20%で課税されます。ただし、一度選択すると暦年課税(年間110万円控除)には戻せません。

住宅取得資金贈与の非課税特例

一定の要件を満たす場合、住宅取得資金として不動産を贈与する際に非課税枠が設けられています。令和の税制改正で金額や条件は変動しており、利用を検討する際は最新の制度内容を確認する必要があります。

3. 不動産の評価額に関する注意点

贈与税や不動産取得税は「不動産の評価額」に基づいて計算されます。評価額は時価ではなく、国や自治体が定める基準によって算出されます。

土地の評価方法

  • 路線価方式:道路に面した土地は、国税庁の公表する路線価に基づき評価。
  • 倍率方式:路線価のない地域は固定資産税評価額に一定倍率をかけて算出。

建物の評価方法

建物は 固定資産税評価額 が基準となります。新築や築年数、構造によって評価額が変動します。

評価額と市場価格の違い

市場で3,000万円で売れる不動産でも、評価額は2,000万円程度となる場合があります。この差が贈与税計算に影響するため、事前に税理士や不動産鑑定士に確認することが重要です。

4. 登記と手続きに関する注意点

不動産贈与は口約束だけでは成立せず、所有権移転登記 を行う必要があります。

必要書類

  • 贈与契約書
  • 登記申請書
  • 贈与者の印鑑証明書
  • 受贈者の住民票
  • 固定資産評価証明書

登録免許税

贈与による所有権移転登記には 固定資産税評価額の2% の登録免許税が課されます。相続登記の場合は0.4%で済むため、贈与の方が費用負担が大きい点に注意が必要です。

不動産取得税

受贈者は不動産取得税も負担しなければなりません。原則として 固定資産税評価額の3%〜4% が課税されます。

5. 贈与にまつわるトラブル事例

贈与契約の撤回トラブル

口約束で「家をあげる」と伝えただけでは法的効力が弱く、後で「やっぱり渡さない」とトラブルになるケースがあります。必ず贈与契約書を作成し、公正証書にしておくことが望ましいです。

相続人間の不公平感

一部の子どもにだけ不動産を贈与すると、相続時に他の子どもが「不公平だ」と主張し、遺留分侵害額請求のトラブルに発展することがあります。生前贈与も「特別受益」とみなされるため、遺産分割全体を見据えた調整が必要です。

贈与者の生活資金不足

高齢者が自宅を子どもに贈与した後、生活資金や介護費が不足し、経済的に困窮するケースもあります。不動産贈与は一度行うと取り戻せないため、将来の生活設計を慎重に考える必要があります。

6. 贈与と相続の比較

項目贈与相続
税率高い(最高55%)相続税率に基づく(最高55%だが控除が大きい)
登録免許税評価額の2%評価額の0.4%
不動産取得税課税あり課税なし
手続き生前に実行可能相続発生後に一括処理
メリット生前に財産移転できる控除や特例が多く税負担が軽い

相続と比較すると、贈与の方が税負担・手数料の面で不利になるケースが多いのが実情です。節税を目的とするなら、慎重に検討する必要があります。

7. 贈与を有効活用するためのポイント

  1. 小口贈与を長期的に行う
     毎年110万円の基礎控除を活用し、現金や預金を分割して贈与する。

  2. 相続時精算課税を戦略的に活用
     評価額が将来上昇しそうな不動産(開発予定地など)は早期に贈与しておくことで、将来の相続税を抑えられる可能性がある。

  3. 専門家に相談する
     贈与は税理士・司法書士・弁護士など複数の専門領域にまたがるため、必ず専門家に相談することが望ましい。

  4. 家族間で十分に話し合う
     贈与は相続時の遺産分割に影響するため、事前に家族間で話し合い、公平感を持たせることが重要。

まとめ

不動産の贈与は「節税になる」と誤解されがちですが、実際には贈与税や登記費用、不動産取得税などの負担が大きく、むしろ相続の方が有利な場合が多いのが実情です。

一方で、贈与は「生前に資産を確実に移転できる」「子どもが早く資産を活用できる」といったメリットもあり、適切に活用すれば相続対策として大きな効果を発揮します。

重要なのは、税務・法務・生活設計の三点を総合的に考えること です。単に「税金が安くなるかどうか」だけで判断せず、将来の相続を見据えたうえで最適な方法を選ぶ必要があります。

不動産の贈与を検討する際には、必ず税理士や司法書士などの専門家に相談し、家族と十分に話し合った上で慎重に進めることを強くおすすめします。