【不動産解説ブログ】不動産投資における用途地域
はじめに
不動産投資を始める際、物件の立地や価格、将来の価値変動などさまざまな要因を検討する必要があります。その中でも、物件が所在する地域の「用途地域」について理解することは非常に重要です。用途地域は、都市計画法に基づいて指定されるもので、その地域で許容される建築物の種類や用途を規定しています。本記事では、不動産投資における用途地域の基本的な概念から、投資判断にどのように影響を及ぼすのかを解説します。

1.用途地域とは
用途地域とは、都市計画法に基づき、市街化区域内で建築物の用途を制限するために指定される区域のことを指します。これにより、都市の秩序ある発展や住環境の保全を図ることが目的とされています。
用途地域の種類
用途地域は、以下の13種類に分類されています。
- 第一種低層住居専用地域
- 主に戸建住宅の建築を目的とした地域。
- 高さ制限や建蔽率が厳しい。
- 第二種低層住居専用地域
- 第一種よりもやや緩やかな規制で、小規模店舗の建設も可能。
- 第一種よりもやや緩やかな規制で、小規模店舗の建設も可能。
- 第一種中高層住居専用地域
- 中層の住宅を中心とした地域。
- 中層の住宅を中心とした地域。
- 第二種中高層住居専用地域
- 小規模店舗や病院などの建設が可能。
- 小規模店舗や病院などの建設が可能。
- 第一種住居地域
- 住宅が主だが、小規模な商業施設も許可。
- 住宅が主だが、小規模な商業施設も許可。
- 第二種住居地域
- 第一種よりも商業施設の建設が容易。
- 第一種よりも商業施設の建設が容易。
- 準住居地域
- 自動車関連施設や工場も建設可能。
- 自動車関連施設や工場も建設可能。
- 近隣商業地域
- 日常生活に必要な店舗や施設の建設が可能。
- 日常生活に必要な店舗や施設の建設が可能。
- 商業地域
- オフィスビルや商業施設が集中する地域。
- オフィスビルや商業施設が集中する地域。
- 準工業地域
- 軽工業を中心とした地域。
- 軽工業を中心とした地域。
- 工業地域
- 重工業も含む工業専用地域。
- 重工業も含む工業専用地域。
- 工業専用地域
- 工場のみの建設が可能。
- 工場のみの建設が可能。
- 田園住居地域
- 農業の継続を目的としつつ、低層住宅の建設も許容される地域。
各用途地域には、それぞれ異なる建蔽率(建物の敷地面積に対する建築面積の割合)や容積率(建物の延べ床面積の敷地面積に対する割合)の制限があります。
2.用途地域の役割
住環境の保護
用途地域の主な役割の一つは、住環境を保護することです。例えば、低層住居専用地域では高層ビルの建設が制限され、静かな住宅街が保たれます。このような規制があることで、住民にとって快適な環境が維持されるのです。
土地の有効利用
都市計画では、土地を効率的かつ効果的に活用することが求められます。商業地域では高層ビルやショッピングモールが建設される一方で、工業地域では工場が集中します。このように用途地域は、土地の利用目的を明確にすることで、都市の整然とした発展を促進します。
社会的コストの削減
用途地域の適切な設定は、住居と工業施設の混在による環境問題や交通渋滞などの社会的コストを削減する役割も果たします。これにより、都市全体の持続可能性が高まります。
3.不動産投資における用途地域の重要性
投資物件の収益性への影響
用途地域は、物件の収益性に直接的な影響を与えます。たとえば、商業地域にある物件は店舗やオフィスとしての賃貸需要が高く、安定した収益を見込めることが多いです。一方で、低層住居専用地域では住宅需要が高いものの、商業施設を建設することができないため、収益性が限られる場合もあります。またその地域における建ペイ率や容積率はその土地にどのようなものを建築できるのかを決定する大きな指標となりますので、必ず確認をする必要があります。商業地域などでは建ペイ率が80%に指定されているケースが多く、第一種低層住居専用地域に指定されている地域では30%~60%に指定されています。同じ土地の広さでも建築できる大きさが大きく異なります。収益性の観点だけでみれば商業地期の方がより大きな建物を建築することが可能となり、収益性が高くなる傾向があるため、その不動産を購入するにあたって大きなポイントと言えます。
資産価値の変動
用途地域は将来的な資産価値にも影響を及ぼします。例えば、近隣商業地域に指定されたエリアでは、周辺の商業施設の発展によって資産価値が上昇する可能性があります。一方で、工業地域では住環境が良くないため、資産価値が上がりにくいことがあります。
リスク管理
不動産投資ではリスク管理が不可欠です。用途地域を理解することで、将来の用途変更や周辺環境の変化によるリスクを予測しやすくなります。特に、再開発が進むエリアや用途変更が検討されているエリアでは、注意が必要です。
4.用途地域を活用した投資戦略
低層住居専用地域での長期安定投資
低層住居専用地域は、静かな環境を好むファミリー層に人気があり、長期的な安定収益を見込めます。建築制限が厳しいため、大規模な開発は難しいですが、その分周辺環境の変化が少ないのが特徴です。
商業地域での高収益投資
商業地域は、テナントとしての店舗やオフィスの需要が高く、高収益を期待できます。ただし、競争が激しいため、立地や物件の差別化が重要です。また、商業地域内の再開発計画などの情報を把握しておくことも成功の鍵です。
準工業地域での多用途利用
準工業地域は、住宅、工場、商業施設の建設が可能なため、多様な用途に対応できるのが魅力です。この特性を活かして、住居付きの店舗や小規模オフィスなど、複合用途の物件を活用した投資戦略が有効です。
おわりに
用途地域は、不動産投資の成否を左右する重要な要素です。投資家として成功するためには、各地域の特性を理解し、投資目的に合った物件を選ぶことが求められます。本記事で解説したポイントを参考に、用途地域の知識を活用して、より効果的な投資戦略を立ててみてください。
